診療案内
皮膚科では、現在常勤医師3名で診療しており、地域のクリニックでは対応困難な病状の患者さんを主に診療しています。 湿疹やアトピー性皮膚炎の様な炎症性の皮膚疾患や、皮膚癌や粉瘤などの皮膚腫瘍、円形脱毛症や水疱症などの自己免疫が関係したもの、帯状疱疹や蜂窩織炎のようなウイルス・細菌感染症など、皮膚科の診療範囲は多岐にわたります。治療も塗り薬や内服薬、注射薬、手術など様々あり、基幹病院ならではの治療として生物学的製剤やJAK阻害薬の使用や、皮膚癌の手術治療を積極的に行っています。可能な限り当院で診断・治療を行う気持ちで診療しておりますが、希少癌の治療や当院で検査や診断ができないものは他の医療機関へ紹介させていただくことがあります。
主な疾患と治療法
- アトピー性皮膚炎
- 皮膚悪性腫瘍
- 化膿性汗腺炎
- 水疱症(水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡など)
アトピー性皮膚炎は、皮膚に湿疹ができやすくなってしまう疾患です。皮膚が弱い(バリア機能が低下している)ことや、アレルギーを起こしやすい(皮膚に炎症をおこしやすい)ことが主な原因と言われています。軽症ではたまに湿疹を作ってしまうくらいの症状ですが、重症な方は全身が湿疹だらけで真っ赤になってしまいます。2018年以降、アトピー性皮膚炎の新しい治療薬がいくつか発売され、中等症以上の方の治療が劇的に変わりました。注射の薬と飲み薬があり、いずれも良く効きます。副作用は0ではありませんが、従来重症の方に使用していたステロイドや免疫抑制剤の飲み薬に比べると、使いやすくなりました。薬剤が高額なことや、根本的に治癒するわけではないため、使用するかどうかは患者さんと良く相談して決めます。
皮膚癌は胃がんや肺がんなどに比べると診断される件数は少ないですが、高齢化により年々増加しています。皮膚癌と言っても様々な種類があり、基底細胞癌・有棘(ゆうきょく)細胞癌が多く、この2つで半数を占めていると言われています。これ以外にもボーエン病や乳房外パジェット病など様々な皮膚癌があります。悪性黒色腫や血管肉腫など大学病院に治療をお願いする場合はありますが、基底細胞癌や有棘細胞癌はほとんど当院で治療(手術)を行います。皮膚癌を切除すると、皮膚欠損ができます。小さいものは皮膚を縫い合わせれば良いですが、大きな欠損の場合は縫うことができず、他の部位から皮膚を移植する植皮術や、周囲の皮膚を用いて欠損を補う皮弁術を用いて欠損部を再建します。
慢性膿皮症とも呼ばれます。毛穴に炎症が生じて浸出液(じゅくじゅくした汁)が出たり、痛みが出たりします。症状がでやすいのは、脇の下、足の付け根、おしり、肛門周囲です。皮膚が膿んでいるように見えますが、細菌はこの病気の本態ではありません。原因ははっきりしていませんが、毛穴に対する過剰な炎症が主な病態で、長期に症状があると皮膚癌が発生することがあります。日本では男性、肥満の方、喫煙者に多く、遺伝することがあります。治療は、塗り薬、飲み薬、手術、生物学的製剤を用います。範囲や重症度により、治療を選び組み合わせて良い状態を保つことを目指します。
全身に紅斑や水疱・びらん(皮膚めくれ)、難治性の口内炎を来す疾患です。皮膚の基底膜や表皮細胞間に存在するBP180やBP230、デスモグレインというタンパクに対する抗体ができることによって発症する病気です。軽症の場合は抗生剤(ミノサイクリンやドキシサイクリン)の内服やステロイド外用で治療しますが、重症の場合は入院が必要になることもあり、ステロイド内服・点滴や血漿交換、免疫グロブリン大量静注療法などの治療を行います。最近、血液疾患に使用されていた薬剤が水疱症にも使えるようになり、治療の幅がひろがりました。
- 円形脱毛症
- 尋常性乾癬
- 蕁麻疹
- 掌蹠膿疱症
人は正常でも1日に100本程度は髪が抜けるといわれていますが、脱毛症は正常な毛の生えかわりと比べて多い量の毛が抜ける状態のことを指す言葉です。脱毛症には円形脱毛症や男性型・女性型脱毛症などがありますが、中でも自己免疫の異常で脱毛が生じる疾患を円形脱毛症といいます。頭に1か所円状にできることもあれば(単発型)、多発したり(多発型)、頭全体に及んだり(全頭型)することもあります。また、頭だけでなく眉や睫毛・脇などの全身に及ぶこともあります(汎発型)。治療は、1か所のみの場合はステロイド外用・注射・液体窒素などで治療しますが、多発する場合や脱毛の面積が大きい場合、発症時期など患者さんの状態によってステロイドの全身投与や局所免疫療法、紫外線療法などの治療を行います。また、最近ではJAK阻害薬という新しい治療薬が使えるようになりました。
全身に銀白色のフケ(鱗屑)を伴う赤い皮疹がでる疾患です。頭や肘、膝、臀部に生じやすく、爪や手指・腰などの関節に痛みを伴う関節炎が合併することもあります。皮膚症状は主にステロイド外用とビタミンD3製剤の外用で治療を行いますが、外用で治りにくい場合は紫外線療法や内服薬で治療することがあります。また、全身に皮膚症状が及ぶ場合や関節炎が合併している場合は比較的新しい薬剤である、生物学的製剤(注射薬)やJAK阻害薬(内服薬)などの全身治療を行います。新しい薬剤の登場により皮疹が無い状態を維持することができるようになってきました。
蕁麻疹は、比較的よくある病気で、15~20%の人は一生のうちに一度は経験するといわれています。蚊に刺されたような痒い皮膚の盛り上がりが、出ては消えることを繰り返します。食べ物や薬に対するアレルギー反応として起こる以外に、感染症や運動、寒暖差、圧迫や日光などによっても起こります。繰り返す急性の蕁麻疹、あるいは何かの機会に一致して時々現れるタイプの蕁麻疹では原因を突き止められることもありますが、1か月以上もの間、毎日のように現れては消えるタイプの蕁麻疹では、ほとんどの場合は原因を明らかにすることができません。治療は花粉症の時にも使用する抗ヒスタミン薬の飲み薬を第一に使います。効きが悪い場合は、胃薬や喘息に使用する薬が効くことが知られており、これらを併用します。それでも症状が改善しない場合は、蕁麻疹を引き起こす物質であるIgEという抗体を押さえる注射薬を用いることがあります。
掌蹠膿疱症は、黄色い液体が溜まった膿疱と呼ばれる皮疹が手のひらや足の裏に生じる疾患で、周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返します。皮疹は小さな水ぶくれが生じ、次第に黄色い膿疱に変化します。手足の皮疹以外にも鎖骨の関節などが痛くなることがあります。喫煙と強い関係があり、患者さんの多くは喫煙者です。また、扁桃炎や歯周病など炎症が体内でくすぶっているものがあると生じやすいとも言われています。治療は塗り薬や紫外線治療、免疫抑制剤や生物学的製剤など行いますが、禁煙や歯医者さんでの口腔ケアなども重要です。
入院の目安
区分 | 入院期間 |
---|---|
皮膚がんの手術 | 1泊2日がほとんどですが、術後安静が勧められる場合は1週間程度。 |
良性腫瘍の手術 | ほとんど日帰りでできますが、大きいものは1-2泊を勧めます。 |
診療実績
皮膚科 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 |
---|---|---|---|---|---|
皮膚、皮下腫瘍摘出術 | 290 | 308 | 182 | 204 | 219 |
悪性腫瘍切除術 | 71 | 64 | 84 | 80 | 60 |
全層、分層植皮術 | 27 | 21 | 39 | 51 | 48 |
スタッフ
紹介
澤田 啓生さわだ ひろお
皮膚科代表部長
- 免許取得年
- 平成9年
- 専門領域
- 皮膚科(アトピー性皮膚炎)
- 専門医・指導医・認定医
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医 / 日本アレルギー学会 アレルギー専門医(皮膚科) / 臨床研修指導医
皮膚は体の中で最も大きな割合を占める臓器です。一見すると同じような皮膚の症状でも、「皮膚は内臓の鑑」とも言われるように体の内側の病気と関係のあるものや、季節や環境、生活習慣など外的な要因が密接に関わるものもあります。また、症状が直接目に見えることから、生活の質に与える影響が非常に大きくなることもあります。最近になって難治な皮膚疾患に対して新しい治療薬が発売される様になり、皮膚疾患の治療も少しずつ変わってきています。治癒を目指すことはもちろん、困難な場合でもそれぞれ患者さんの困られる症状に応じて、必要な検査や治療方法、日常生活での注意点などをお伝えし、より良く過ごせるような助けになれるよう努めます。
小田 隆夫おだ たかお
皮膚科部長代理
- 免許取得年
- 平成25年
- 専門領域
- 皮膚悪性腫瘍
- 専門医・指導医・認定医
- 日本皮膚科学会 皮膚科専門医 / 臨床研修指導医
皮膚疾患は、ぱっと一瞬見るだけで診断が付けられるものがありますが、一度の診察では診断ができず、何度か見せていただいたり、何度か検査を行って、やっと診断できるものもあります。また、診断が的確にできても、症状の改善まで時間や労力を要するものがあり、残念ながら治癒が未だ困難な疾患もあります。そして、同じ病気でも困られる症状が患者さんによって様々です。 症状、原因、治療が様々である皮膚疾患に対し、患者さんと共に考え、患者さんの為になる治療方法を提案できるように努めます。
宮崎 愛子みやざき あいこ
医員
- 免許取得年
- 平成30年
- 専門領域
- 皮膚科全般
小さなお子様からご高齢の方まで、丁寧な診察・正しい診断・適切な治療を心がけてまいります。