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0567-65-2511

診療案内

ライナック装置による外部照射療法を行っています。平成28年に装置を更新し、高精度な位置合わせと強度変調(IMRT)による優れた線量分布の実現が可能になりました。令和3年より、回転照射(VMAT)によるIMRTの保険診療を開始しました。前立腺、脳、頭頸部をはじめ、肺、食道、肝胆膵、子宮など保険適用となるほぼ全症例に対しIMRTを実施しています。定位照射(ピンポイント照射)も、10個程度や大型病変(脳腫瘍)、肺、肝臓、腎臓など呼吸性移動の大きい腫瘍、脊椎など少数個(オリゴ)転移に適応を広げ、VMATで対応しています。前立腺20回、乳腺術後16回など寡分割照射も積極的に適用しています。緩和照射でも、高精度照射を活用し、効果を高め、副作用を軽減できるよう努めています。尚、入院診療、全身照射、小線源治療、粒子線は行っていません。入院での治療が必要な場合は、まず関連診療科にご相談をお願いします。

主な疾患と治療法

  • 転移性脳腫瘍に対する強度変調定位照射
  • 強度変調回転照射による全脳脊髄腔照射
  • 肺がん・肺腫瘍に対する定位照射・強度変調放射線治療
  • 肝腫瘍に対する定位照射・強度変調放射線治療

脳腫瘍のなかで治療機会が最も多いのは脳転移です。以前のライナックでは、3か所でも1時間程度の治療時間を要していましたが、当院では強度変調回転照射(VMAT)を活用し、10か所前後でも30分未満で照射可能です。薬物療法との協調を重視し、局所治療を優先しますが、病状によっては全脳照射を同時併用します。これまでのガンマナイフ、サイバーナイフ、そしてノバリスなど様々なライナック装置での治療経験に基づき、ガンマナイフの線量分布の利点も統合し、病態に適した線量分布を採用しています。また大きさ、局在、病変間の距離などを考慮した柔軟な線量分割を活用し、3cmを超える病変に対しても適応拡大しています。原発性腫瘍に対してもVMAT・定位照射を活用しています。

がん細胞が脳脊髄周囲の髄液腔に及ぶ場合、有用な照射法です。広範囲の照射となり、通常の三次元照射では、成人の場合、3つの計画を組み合わせる必要があり、繋ぎ目での線量の過不足や皮膚炎・食道炎・血球減少などの急性期の副作用が問題となりやすい治療です。強度変調(VMAT)により、標的体積の線量の均一性の向上・局所の意図的な線量増加とともに周囲正常組織の線量軽減による副作用軽減が可能です。当院のような汎用装置での実施可能施設は国内でも限られます。

肺の末梢部にある小型肺がんに対しては4~5回の定位照射が可能です。呼吸に伴う腫瘍の動きが大きい場合は、一時的に呼吸を止めた状態(息を吐いた楽な状態)で、照合し照射します。定位照射でも、強度変調(VMAT)による線量分布、FFFビームによる短時間での照射を活用しています。局所進行例や症状緩和目的の照射でも、強度変調・定位照射の技術を活用し、腫瘍への十分な線量担保と正常組織の線量軽減をはかり、より早期の十分な腫瘍縮小に伴う症状の早期改善、治療に伴う副作用の軽減に努めています。

肝臓の部位や栄養血管の状態によっては、手術や他の一般的な局所治療(ラジオ波焼灼術、塞栓術)が困難な場合がありますが、そのような例に対し強度変調定位照射が適用できる場合があります。肝臓は呼吸に伴い、動きや臓器の変形が大きいため、一時的に呼吸を止めた状態(息を吐いた楽な状態)で、照合し照射します。金属マーカー留置を要しないため、準備から治療まで痛みを感じる処置はありません。強度変調(VMAT)による線量分布、FFFビームによる短時間での照射(25~30分以内)を活用しています。病変と胃腸が近い場合、肝機能(予備能)が低下している場合は、十分な線量付与が困難なことがあります。

  • 前立腺がん・膀胱がんに対する強度変調放射線治療
  • 婦人科系腫瘍に対する強度変調放射線治療
  • 脊椎腫瘍・脊椎転移に対する強度変調定位照射

初期の前立腺がん(臓器限局性)は、強度変調(IMRT)の対象疾患として国内で最も多く実施されています。当院では泌尿器科の協力のもと金属マーカーを留置し、コーンビームCTによる毎回の高精度照合を行っています(マーカー無しでも実施可能です)。強度変調(VMAT)では、小線源治療の線量分布の要素を統合し、周囲の直腸・膀胱の線量軽減に加え、中心部の尿道の過線量軽減に配慮した線量分布で最適化しています。また、根治照射では、従来の37~39回ではなく、20回(4週間程度)の中等度寡分割照射を積極的に推進しています。その他の尿路系腫瘍、症状緩和目的の照射でも高精度照射技術を活用し、治療期間の短縮に配慮しています。

子宮がんに対する根治照射では、従来の2~4方向からの三次元外部照射のみでは病巣への十分な線量付与が困難なため、小線源療法(腔内照射)の併用が必須でした。しかし一般的な小線源治療の定型的な線量分布(二次元)では、十分な線量担保が困難な局所進行例は少なくありません。そのような例には、組織内照射を併用した高精度な画像誘導小線源療法が必要ですが、十分な経験を有する実施施設は限られています。組織内照射でも対応困難な例に対しても、強度変調(VMAT)を活用し、寛解導入を目指した根治的照射を行っています。また、リンパ節進展が高度な例に対しては、鼠径部・腹部傍大動脈領域を含めた広範囲照射を、強度変調で行い副作用軽減を図っています。

一般的な緩和照射では、皮膚炎、食道炎(頸椎~胸椎)、唾液腺障害(上位頸椎)などが問題となりやすく、脊髄・神経には処方線量と同等の線量が照射されるため、十分な線量付与が困難で、一部の例では再増悪を認めます。また、単発・少数個(オリゴ転移)では局所の長期制御を目指した十分な線量での治療が望ましいです。強度変調(VMAT)を活用し脊髄や周囲組織の線量を軽減した定位照射を積極的に適用しています。痛みを伴う例や脊髄硬膜外圧迫を伴う例に対しては早期の治療開始をはかっています。

入院の目安

当科は入院ベッドを有していませんので、入院での放射線治療が必要な場合は、あらかじめ主治医・担当医より当院の関連診療科に紹介・入院依頼をしていただくようお願いいたします。

診療実績

放射線治療患者数

原発巣 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
新規患者 261 260 316 354 332
新規+再診患者 合計 307 312 368 431 437

原発巣別患者数(新患+再患)

原発巣 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
脳・脊髄 6 5 10 7 4
頭頸部(甲状腺を含む) 24 24 33 31 34
食 道 9 17 16 11 9
肺・気管・縦隔(うち肺) 72(72) 85(84) 114(114) 145(145) 150(148)
乳 腺 30 42 49 47 46
肝・胆・膵 5 8 14 6 4
胃・小腸・結腸・直腸 18 15 17 19 20
婦人科系 4 12 19 16 26
泌尿器系(うち前立腺) 65(53) 54(42) 67(53) 111(87) 109(97)
造血器リンパ系 20 17 17 25 18
皮膚・骨・軟部 4 1 5 5 9
その他(悪性腫瘍) 3 2 3 4 2
良性疾患 1 1 4 5 4

照射法別患者数

令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
定位照射(脳) 11 9 41 59 51
定位照射(体幹部) 17 11 33 40 52
強度変調放射線治療 0 26 172 223 212
回転原体・4門以上照射 134 164 133 144 149

放射線治療・新規患者数
放射線治療・再患者数
定位照射(体幹部)
強度変調放射線治療件数(新患+再患)
画像誘導放射線治療(IGRT)
放射線治療・延べ照射回数

スタッフ
紹介

大宝 和博おおたから かずひろ

放射線治療科代表部長

免許取得年
平成6年
専門領域
放射線治療 / 特に定位照射 / 強度変調放射線治療など高精度外部照射療法
専門医・指導医・認定医
日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医 / 日本医学放射線学会 研修指導者 / 臨床研修指導医

医学部卒業後、当初は外科系の診療に従事していましたが、脳疾患のピンポイント(定位)照射に従事する機会を得たことを契機に、高精度外部照射の有用性・重要性、更なる発展の余地・必要性を認識し、以後専門としています。放射線治療は、二次元から三次元、そして強度変調と、この10-20年間でも装置・技術が大きく進歩しました。その結果、処方線量が同じでも、治療計画・線量分布の違いで効果・副作用はかなり変わってきます。外科医師が手術手技の改良・改善に努力を重ねているように、現行の一般的な治療に改善の余地がないかを考え、当院導入装置の機能を最大限活かせるよう努めています。契機となった頭部の定位照射に限っても20年を経た現在でも、担当症例から毎年多くの事を学んでいます。

堀川 よしみほりかわ よしみ

非常勤医師

免許取得年
昭和59年
専門領域
放射線治療一般
専門医・指導医・認定医
日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医 / 日本医学放射線学会 研修指導者 / 臨床研修指導医

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