診療案内
耳鼻いんこう科では、耳鼻咽喉科領域の全ての疾患に対し、データ(エビデンス)に基づいた最新の治療を行っています。特に頭頸部悪性腫瘍については大学病院レベルの治療を行っており、下咽頭・喉頭の悪性腫瘍の症例の一部では形成外科、外科と合同で行う頭頸部再建手術についても対応可能です。
鼻の症例においては、鼻中隔弯曲の手術や、副鼻腔の内視鏡手術を中心に治療を行っていますが、多くの副鼻腔手術症例ではナビゲーションシステムを使用し、より安全かつ正確な手術を行っています。
耳の症例においては、専門性が高いものは大学病院へ紹介となる場合もありますが、多くの症例は当院で対応可能です。
鼓膜穿孔に対しては、侵襲の少ない鼓膜再生療法を実施、また一般的な医療機関では治療に難渋することが多い耳鳴症については、カウンセリングも含めた専門外来を設けて、苦痛の軽減を目指した診療に取り組んでいます。
主な疾患と治療法
- 頭頸部がん
- 耳下腺腫瘍
- 慢性副鼻腔炎
- 耳鳴り
首から上のがんを頭頸部がんと呼びます。いずれも進行すると、それぞれの器官が持つ機能(耳であれば聴覚、のどであれば発声や嚥下機能 など)が低下し、日常生活に支障をきたすようになるため、早期発見、早期治療が特に重要ながんです。
治療は、手術、放射線、化学療法(抗がん剤)、免疫療法の中から、(エビデンスがあるとされる)治療ガイドラインに準じた治療法を選択していきますが、最も良いとされる治療(標準治療)の中に複数の選択肢がある場合は、患者さんの年齢、体力、ご希望(手術治療か放射線治療か、治療後の機能温存とのバランス)を考えながら、治療方針を決定します。
当院では喉頭、下咽頭癌の手術症例においては、この地域の中核医療機関では対応することが少ない頭頸部再建手術に対応しています。また放射線治療を行う場合は、副作用を軽減した、IMRT(強度変調放射線治療)を用いた治療をおこなっています。
耳の下に唾液を作る耳下腺という臓器があり、その部位に腫瘍ができる病気です。ワルチン腫瘍と、多形腺腫というタイプの良性腫瘍が大部分を占めています。
まずは画像検査、および穿刺吸引細胞診(注射針で細胞を一部吸引する検査)で診断を行い、治療が必要な場合には手術治療を行います。 ワルチン腫瘍の場合、原則治療は不要ですが、耳下腺腫瘍は術前診断が難しいこともあり、手術を行うこともあります。多形腺腫の場合は、悪性化リスク(10年間で約5%)がありますので、原則手術をお勧めしています。
当院の耳下腺手術では、耳下腺内を走行する顔面神経損傷のリスクを軽減するため、全例NIMという術中神経モニタリングシステムを使用し神経損傷リスクを軽減しています。また顔面になるべく傷跡が目立たないように、美容形成手術の際に用いられるface
lift approachという皮膚切開法で多くの場合対応しています。
鼻の奥にある副鼻腔という部屋におきる病気で、鼻閉、鼻汁、後鼻漏、頭痛、嗅覚障害などの症状を引き起こします。原因は多岐にわたり、慢性的な細菌感染によるもの、真菌(カビ)が原因となって生じるもの、ポリープ(鼻茸)によるもの(好酸球性副鼻腔炎を含む)などが挙げられます。薬による治療が一般的ですが、薬で改善しない場合は内視鏡での手術を行います。副鼻腔は眼窩(眼球付近)、頭蓋底(脳との境界部分)と隣接している場所でもあり、当科ではナビゲーションシステムを用いて安全、確実に手術操作を行う対応をしております。また、近年好酸球性副鼻腔炎の病態が増加しており、再発に対して悩まれている方には手術加療の他に、モノクロナール抗体皮下注射薬(デュピクセント)の治療も適応条件を満たした症例では行っています。
人口のおよそ10%-15%が耳鳴りを経験しているというデータがあり、そのうち約2割が重い症状に苦しんでいるともいわれています。原因は突発性難聴などの内耳疾患や、聴神経腫瘍、加齢性難聴、ストレスなど多岐にわたります。当科ではまず耳鳴りを生じる病態の診断をすすめ、治療可能な疾患に対しては治療を行います。原疾患の改善により耳鳴症状も改善し得ますが、耳鳴りが症状として残存し慢性化するケースもあり、その場合は耳鳴りで生活に支障を減らすべく、治療をすすめます。具体的には音響療法や耳鳴りカウンセリング、難聴を伴う耳鳴りには補聴器を用いた対応などを行います。当院では一般外来の時間にも耳鳴りに対する診療も行っていますが、毎週木曜の午後に専門外来(予約制)を設けてより専門的に対応しています。
- 睡眠時無呼吸症候群
- 扁桃肥大・慢性扁桃炎
- 突発性難聴
- めまい
睡眠時に鼻や喉の通りが狭くなることで、いびき・日中の眠気や疲労感等の症状が起こる病気です。運転中の突然の眠気による交通事故や仕事中の集中力低下の原因と成り得ます。高血圧・糖尿病・脂質異常症との関連も指摘されており、未治療であれば脳血管・心血管系の合併症による死亡率を上昇させるとされています。当院では、そのような訴えで来院された患者さんに対して、のどの閉塞部位の確認、ご自宅での簡易検査や1泊入院での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行い、睡眠時無呼吸の程度を診断、重症度に応じて治療方針を決定しています。治療は、生活指導・就寝時のCPAP装着・マウスピース装着、手術等があります。アレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症、扁桃肥大・アデノイド増殖症等を併発している方には、そちらの治療も並行して行います。持続陽圧呼吸療法(CPAP)は毎月の通院が必要ですが、安定して装着可能になればかかりつけの医療機関への紹介も行っております。
口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)が肥大すると、いびき・呼吸障害・日中の眠気・集中力低下・食べ物が飲み込みにくい等の症状が出現し、小児では睡眠・呼吸の障害により心身の成長に障害が出る恐れがあるため手術適応となる場合があります。
また口蓋扁桃は慢性炎症を来しやすい臓器であり、慢性炎症(慢性扁桃炎)の状態では、ストレス等の免疫力の低下により炎症が進行し、発熱・咽頭痛・咽頭違和感等を繰り返しやすくなります。扁桃炎が進行し扁桃周囲に膿が溜まると、呼吸困難・嚥下困難が出現し入院加療が必要になる場合もあります。治療は抗生剤や消炎鎮痛剤を投与しますが、炎症を繰り返す場合は手術を行うことも可能です。手術は全身麻酔で口蓋扁桃を摘出します。入院期間は約5日間で、お子様はご家族同伴での入院も可能です。当院では小児から成人まで幅広い年齢層の方に年間100例以上の手術を行っております。
突然、きっかけもなく、片方の耳が聞こえなくなる原因不明の疾患です。原因不明ですが、最近では、内耳の循環障害やウイルス活動、ストレスが関連していると考えられています。ステロイドの全身投与が最も効果が期待できる治療であり、点滴もしくは飲み薬で治療します。ご高齢の方や糖尿病などの持病がある場合は入院で慎重に様子を見ながら治療を行います。点滴もしくは飲み薬で効果が見られなかった方や、持病によりステロイド全身投与ができない方には、ステロイド鼓室内投与も行っています。鼓膜に注射し鼓室内へ直接ステロイドを注入する治療方法ですが、近年ではステロイド全身投与に匹敵する効果が期待できるといわれ注目されています。突発性難聴は早めに治療を開始することが大切です。1週間以内、とくに48時間以内の治療開始が望ましいとされていますので聞こえの異変を感じたら早めに病院を受診してください。
めまいは日常でよくみられる病気のひとつです。天井がぐるぐる回る、船に乗ったようにふわふわするなどの症状が起こります。めまいが起こると多くの方は脳の病気を心配されますが、実はめまいの60%は耳の中に原因があるといわれています。代表的な病気として、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴に伴うめまい、外リンパ瘻などがあります。最近では原因不明の長引く慢性めまいに対しPPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)という新しい概念が定義されました。原因にあった治療を行うために、問診・診察に加え、眼振検査、聴力検査、重心動揺検査、カロリックテストなどを行い診断します。脳梗塞や脳腫瘍が疑わしい場合は頭部CT検査・MRI検査を行います。めまいの治療はお薬だけではなくリハビリテーションが効果的であり、自宅で行える簡単な運動も指導しています。
入院の目安
区分 | 入院期間 |
---|---|
口蓋扁桃の手術 | 5-6日程度 |
鼻の手術 | 5-6日程度 |
耳瘻孔の手術(全身麻酔) | 2-3日程度(局所麻酔の場合は日帰り) |
直達喉頭鏡下喉頭微細手術 | 3-4日 |
頭頸部腫瘍(良性・一部の悪性腫瘍) | 7-10日間程度 |
喉頭全摘術 / 咽喉頭食道全摘術 | 3-4週間 |
めまいの入院 | 症状が良くなるまで |
突発性難聴(入院の場合) | 7-14日間 |
顔面神経麻痺(入院の場合) | 7-14日間 |
睡眠時無呼吸症候群(PSG検査) | 1泊2日(夕方4時入院、翌日、起床後退院可能) |
抗がん剤の点滴治療 1コースあたり | 8-14日程度(使用する抗がん剤により異なります) |
診療実績
耳鼻いんこう科 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 |
---|---|---|---|---|
鼻閉改善手術 | 46 | - | - | - |
鼻中隔矯正術 | - | 31 | 21 | 38 |
粘膜下下鼻甲介骨切除術(側) | - | 49 | 32 | 64 |
ESS (側) | 65 | 66 | 72 | 62 |
鼻腔悪性腫瘍手術 | 1 | 0 | 0 | |
口蓋扁桃摘出術(側) | 149 | 105 | 71 | 160 |
アデノイド切除術 | 29 | 29 | 17 | 41 |
鼓膜チュービング(側) | 56 | 25 | 17 | 47 |
鼓膜形成術 | 0 | 0 | 0 | 0 |
気管切開術 | 13 | 6 | 10 | 9 |
顎下腺手術(良性) | 3 | 2 | 1 | 6 |
顎下腺手術(悪性) | 1 | 0 | 0 | |
耳下腺手術(良性) | 7 | 12 | 3 | 8 |
耳下腺手術(悪性) | 2 | 1 | 1 | 0 |
甲状腺手術(良性) | 8 | 9 | 8 | 8 |
甲状腺手術(悪性) | 6 | 9 | 3 | 7 |
喉頭微細手術 | 11 | 5 | 4 | 10 |
リンパ節生検 | 21 | 32 | 26 | 23 |
頸瘻摘出術 | 2 | 1 | 1 | 0 |
甲状舌管嚢胞摘出術 | 2 | 1 | 1 | |
耳瘻孔摘出術 | 6 | 6 | 2 | 10 |
深頚部膿瘍開放術 | 1 | 2 | 2 | 4 |
喉頭悪性腫瘍手術 | 6 | 3 | 2 | 0 |
喉頭悪性腫瘍手術(頭頸部再建あり) | 0 | 3 | 1 | 0 |
頸部郭清術 | 15 | 15 | 12 | 5 |
咽頭悪性腫瘍手術 | 1 | 1 | 0 | 0 |
咽頭悪性手術 (頭頸部再建あり) | 0 | 3 | 3 | 0 |
舌・口腔悪性腫瘍手術 | 1 | 0 | 1 | 1 |
嚥下改善手術(声門閉鎖術) | 0 | 0 | 0 | 1 |
スタッフ
紹介
原田 生功磨はらた いくま
耳鼻いんこう科代表部長
- 免許取得年
- 平成16年
- 専門領域
- 耳鼻いんこう科一般・頭頸部外科・補聴器診療
- 専門医・指導医・認定医
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医 / 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門研修指導医 / 日本アレルギー学会 アレルギー専門医 / 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 / 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定騒音性難聴担当医 / 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談 / 厚生労働省 補聴器適合判定医師 / 日本嚥下医学会 嚥下障害講習会修了 / 臨床研修指導医
耳鼻いんこう科はコミュニケーション機能に対して、重要な役割を担う専門科です。
皆さまのコミュニケーション機能の向上に役立ちたいとの思いが、私が耳鼻いんこう科を目指した原点です。
専門の頭頸部外科のみではなく、地域の中核医療機関の部長として、あらゆる疾患に対応するべく、日々研鑽を重ねております。
データ(エビデンス)に基づいた医療の実践を最も重視していますが、患者さんを取り巻く社会的背景まで考慮し、患者さん1人1人に真摯に向き合って、その方に最良の医療を提供してまいります。
杉山 喜一すぎやま よしかず
耳鼻いんこう科部長
- 免許取得年
- 平成20年
- 専門領域
- 耳鼻いんこう科一般・補聴器診療
- 専門医・指導医・認定医
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医 / 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門研修指導医 / 厚生労働省 補聴器適合判定医師 / 日本耳鼻咽喉学会 嚥下障害講習会修了 / 臨床研修指導医
地域の拠点病院として、お役に立てるように日々研鑽し、満足いただける診療を心がけております。
青木 加那あおき かな
耳鼻いんこう科医長
- 免許取得年
- 平成24年
- 専門領域
- 耳鼻いんこう科一般
- 専門医・指導医・認定医
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医 / 日本嚥下医学会 嚥下障害講習会修了 / 臨床研修指導医
丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけております。
近藤 綾乃こんどう あやの
医員
- 免許取得年
- 平成30年
- 専門領域
- 耳鼻いんこう科一般
新井 風菜あらい ふうな
医員
- 免許取得年
- 令和3年
- 専門領域
- 耳鼻いんこう科一般
横田 将己よこた まさき
医員
- 免許取得年
- 令和4年
- 専門領域
- 耳鼻いんこう科一般