診療案内

  • 名古屋大学心臓外科学教室(碓氷章彦教授)の協力を得て平成15年4月に心臓血管外科を開設して診療をおこなっています。ここ20年間の心臓血管手術の発展には目覚ましいものがあり、多くの患者さんがその恩恵を受けつつあります。当然、医師の理念にも大きな変化が生じて、手術の適応なり、至適時期の決定にはそれぞれの施設ごとに内科医と外科医との間で真剣に討論が持たれるようになりました。心臓血管外科の手術は術者の経験などによって、手術成績が左右されることは否定できません。自施設の業績の集積により、手術適応を討論すべきです。原則として一人の患者さんの治療に関して内科医と外科医の間で大きな意見の相違があってはなりません。当科では開設以来、循環器内科医とチーム(ハートチーム)を組み協力して自己データを保有して、知識と技術を向上させるための努力をしています。
  • 当院のモットーは患者さん一人一人に納得のいく治療を提供すること、24時間体制で心臓血管外科手術に対応することです。そして何より大切にしているのは我々に治療を任せていただける患者さんとそのご家族に対して優しさと感謝の気持ちを持つことです。心臓の手術を前にして不安が無いなんてことはありえません。遠慮なく疑問点や不安に思っている内容などをぶつけていただければと思っております。
    • 心臓血管外科 山崎武則
      心臓血管外科 山崎武則
  • 当院の心臓血管外科が対象とする疾患は、基本的には成人疾患になります。主なものは狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(冠動脈バイパス手術など)、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、大動脈解離症(人工血管置換術など)、弁膜症、感染性心内膜炎(弁置換・弁形成術など)、不整脈(メイズ手術)、閉塞性動脈硬化症(各種バイパス手術)などです。先天性心疾患は成人期のものと新生児の動脈管開存症などを治療しています。
  • 手術室
  • 当院では地域の先生がたとしっかりとした病診連携システムを構築しています。もちろん緊急性を要する疾患については直接ご連絡(代表0567-65-2511に電話していただき心臓血管外科医師に繋ぐようにご指示ください)いただければ対応させていただきます。周辺地域の救急隊と勉強会で共有しながら密接な連携をとっており、平成22年6月からは、ドクターカーの運用も開始しています。救急科(平成18年4月発足)及びICUが救急疾患に対して積極的に介入しており心臓外科緊急手術への対応は極めて迅速です。また急性冠動脈疾患に迅速に対応するために平成20年9月にCCUを開設し、現在は救命救急センター内にその機能を包含しております。24時間循環器内科医師が待機する体制を確立しており、胸痛や心不全患者さんの常時受け入れが可能となっております。
    • CCU
      CCU
    • ICU
      ICU

    外来担当医はこちら

    対象疾患・治療について

    虚血性心疾患

    狭心症や心筋梗塞の治療にはカテーテル治療に代表されるような内科治療と冠動脈に血管を移植する外科治療とがあります。患者さんの冠動脈病変の形態や年齢、併存症などを総合的に評価して外科的手術が適していると考えられる場合は冠動脈バイパス術(以下CABGと略します)を実施します。 当院は急性心筋梗塞搬送病院の指定を受け、24時間体制で虚血性心疾患の治療にあたっております。最近のカテーテル治療の進歩はめざましく多くの症例が内科的に治療可能となりましたが、病変や合併症の存在などにより外科的治療に頼らざるを得ない症例があります。従って近年、心臓外科が扱う冠動脈病変はますます多枝化、複雑化しており、加えて重篤な合併症を伴う症例が増加しています。
    1990年代半ばより「低侵襲心臓手術」として人工心肺を使用しない冠動脈バイパス手術(オフポンプCABG)が登場しました。高齢者や脳血管障害ハイリスク症例その他の体外循環禁忌症例など、従来では手術の適応にならなかった患者さんにも、オフポンプCABGにより血行再建が可能となりました。つまりCABGには大きく分けて、人工心肺装置を使用して心停止下に血管吻合を行なうオンポンプCABGと人工心肺を使用せずに、心臓を拍動させたまま行なうオフポンプCABGとがあります。オンポンプCABGでは心臓を停止させて血管を吻合するため、より質の高い吻合とほとんどの冠動脈領域の血行再建が可能です。一方でオフポンプCABGでは前述したように人工心肺の使用に伴う合併症やリスクを回避できるというメリットがあります。日本では低侵襲化の流れから、約60%にオフポンプCABGが実施されていますが、欧米ではオンポンプCABGが主流でオフポンプの頻度は約20%程度に留まっています。
    我々のモットーは、患者さんにベストかつシンプルで安全性の高い血行再建術を提供することです。人工心肺そのものに侵襲性が存在することは否定しませんが、オフポンプCABGにも術中の急激な血行動態の変化に対応しにくいことや遠隔期成績がオンポンプのそれより若干劣るなどの欠点が存在し、再考の時期に入っています。現在は体外循環が問題無く使用できると考えられる症例ではオンポンプCABGを選択して完全血行再建を目指すことを基本方針にしています。しかし術後の脳梗塞や肺機能障害が懸念されるような体外循環ハイリスク症例ではオフポンプCABGを選択しています。手前味噌で大変恐縮ですがオフポンプ、オンポンプ手術の双方に習熟しており、しっかりした技術的な裏付けと根拠をもとに手術の安全性を確保しています。

    オンポンプCABG

    オフポンプCABG

    周術期の脳梗塞合併症対策として術中大動脈エコー検査を重視しています。非常に簡便で大動脈の内膜肥厚の様子を把握することができます。全例に実施して人工心肺使用の可否や手術のデザインを決定しています。

    術中大動脈エコー
    術中大動脈エコー

    心筋虚血が進行してしまい心臓のポンプ機能が著しく低下してしまった状態を虚血性心筋症と呼びます。心臓が拡大して弁膜症を合併してくると生命予後が不良です。バイパスに加えて、心臓の形態を外科的に修正する左室形成術や合併する僧帽弁閉鎖不全に対する弁形成術などを付加します。これらには重症例が多く、術式の選択は非常に重要で循環器内科と詳細なカンファレンスを行なって検討しています。

    左室形成術(ドール手術)
    左室形成術(ドール手術)

    冠動脈に移植する血管は一般的に「グラフト」と呼ばれていますが、主なものは胸壁の裏側を走っている動脈(内胸動脈)、足の表面を走っている静脈(大伏在静脈)、腕の動脈(橈骨動脈)、胃の栄養血管(胃大網動脈)などがあります。その選択と取り回し(配置や吻合法のデザイン)については多彩なオプションを持っており最適な血行再建術が提供できるように配慮しています。退院前には心臓カテーテル検査を行い、グラフトを含めた冠動脈の血流評価を行なっています。最近は術後の確認造影はMDCTの導入により、患者さんにとってより低侵襲になりました。

    術後グラフト造影
    術後グラフト造影

    CABG術後CT

    CABG術後CT

    弁膜症

    弁膜症に対する手術には弁置換術と弁形成術があります。近年、高齢者の動脈硬化性の大動脈弁狭窄症、及び僧帽弁では逸脱症や虚血性心疾患に伴った僧帽弁閉鎖不全症が増加しております。弁膜症は無症状に経過する期間が比較的長く心筋のダメージが予想以上に進行しています。成績向上のためには心不全に陥る前の治療がすすめられます。
    弁置換術は悪い弁を取り除き人工弁に入れ換える手術です。機械弁と生体弁に分類されますが、耐久性に優れる機械弁、抗凝固療法の必要性の無い生体弁などそれぞれに特徴があります。近年では生体弁にも組織固定法や石灰化抑制処理などに工夫が加えられ、耐久性のかなりの向上(おそらく15年以上は大丈夫でしょう)が見込まれています。

    • 生体弁
      生体弁
    • 機械弁
      機械弁

    前述しましたが大動脈弁狭窄症は高齢者に多い弁膜症で、心臓から血液が全身に向かって出て行く際に扉の役目をする弁(大動脈弁)が開きにくくなってしまう疾患です。病状が進行すると突然死などのリスクがあります。これに対する弁置換術は術式も確立しており安全で確実性の高い手術です。しかし、人工心肺を利用して心停止下に実施するため全身の臓器に負担を強いることになります。一般的には80歳以上の高齢者や日常生活動作(ADL)の低下した方、開胸手術歴のある方や癌患者さん、重要臓器に問題のある方は手術を選択しない方がよろしいかと考えます。そのような患者さんを対象にした治療法として、現在では「経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)」が一部の施設で実施されています。現在のところ残念ながら当院では実施していませんが、病診連携を通じて紹介を行なって速やかに実施していただいています。

    • 生体弁
      経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)

    弁形成術は自分の弁を作り直す手術です。大動脈弁への適応にはまだ一般的ではありませんが、僧帽弁逆流(弁尖の逸脱などによるもの)や三尖弁逆流に関してはほぼ手技的に確立しています。最終的に形成術が可能かどうかは心エコー検査で判断します。症例ごとに弁逆流のメカニズムを評価して、形成可能症例には積極的に採用しています。

    • 変性した僧帽弁
      変性した僧帽弁
    • 僧帽弁形成術のシェーマ
      僧帽弁形成術のシェーマ
    • 僧帽弁形成術
      僧帽弁形成術

    治療選択の目安としては‥‥年齢を問わず僧帽弁と三尖弁は弁形成術の可能性を最初に考慮します。大動脈弁に関しては人工弁置換術を選択します。人工弁の選択(生体弁or機械弁)については、生体弁耐久性の向上と抗凝固剤内服の必要性等から70歳前後をボーダーラインと考えています。具体的には65歳未満の方には機械弁を、70歳以上の方には生体弁をお薦めして65歳から70歳までの年齢の方にはご本人に選択していただいています。
    弁膜症の手術成績は心機能によるところが大きく、いたずらに手術を引き延ばすべきではないと考えます。外科治療を念頭にいれて循環器専門医による評価と定期的なフォローアップが必要です。  
    緊急性を要する弁膜症の手術疾患として“感染性心内膜炎”があります。感染性心内膜炎は心臓内の弁などの構造物に細菌が付着して感染を起こす疾患です。稀な疾患ですが、心不全と菌血症(細菌が血液内に侵入して繁殖すること)が進行して何らかの治療を施さなければ救命できない恐ろしい疾患です。弁膜症、先天性心疾患や抜歯などの歯科観血的治療後の患者さんなどに発症しやすく、また透析や糖尿病患者さんなど免疫状態の低下している場合にも罹患しやすいといわれています。すなわち体のどこかから血液中に細菌が侵入して発症する疾患のなかで最悪のものと考えられます。余談のようですが、最近になって意外な原因が注目されてきました。それは歯磨きや咀嚼という口腔関連の日常行為による出血です。歯磨きは一日に何度も行なう行為ですが、もし歯周病がひどくて口腔内で出血していると、毎日何回も菌血症になる可能性があるわけです。実はこのような菌血症こそが感染性心内膜炎の原因として重要なのではないかと考えられています。
    本症は心不全治療と感染症治療を同時並行で行ないます。しかしいずれの治療もコントロールがつかなければ外科的介入が必要となります。当院の医療圏においては比較的本疾患が多いという印象があります。常日頃から口腔内衛生に留意する必要があることをここで強調しておきます。

    • 細菌に侵された僧帽弁
      細菌に侵された僧帽弁
    • 細菌に侵された大動脈弁
      細菌に侵された大動脈弁
    大動脈瘤

    大動脈瘤とは大動脈にできる瘤(こぶ)のことで、できる部位や範囲によって治療方法が大きく異なります。大きさが胸部では5〜6cm、腹部では4〜5cmを越えるものが一般的に手術の適応となります。

    • 上行弓部大動脈瘤
      大動脈瘤

    胸部大動脈瘤は手術において脳脊髄や心臓など重要臓器を保護するための補助循環が必要となり侵襲も大きくなるため、患者さんの年齢や合併症等により治療方針を慎重に選択する必要があります。また近年、手術中に術野から使用できるステントグラフトが市販されるようになり、手術が以前より低侵襲下に行なえるようになりました。

    • 上行弓部大動脈瘤
      胸部(上行弓部)大動脈瘤
    • 上行弓部人工血管置換
      弓部大動脈手術
    • 上行弓部人工血管置換
      胸部(上行弓部)人工血管置換
    • 下行大動脈瘤
      ステントグラフト用いた上行弓部人工血管置換

    腹部大動脈瘤は日常の臨床でしばしば遭遇する疾患です。そのほとんどが動脈硬化性で、罹患率についてはっきりとした報告はありませんが、潜在する症例はかなり多いと考えます。腹部に拍動するしこりを認めれば、必ずエコー等で確認することが必要です。この疾患は多くの場合が「無症状」ですが、実はそれが曲者です。本症は①他疾患の精査で画像上偶然診断される ②検診 ③患者さん自身が腹部の拍動に気づいて受診 ④破裂時 などにより診断されていますが、頻度的にはこの順に多いのが実態です。救急医療の現場では突然の破裂による大量出血で病院に到着しても既にショック状態で、慌てふためいてオペ室へ直行することも多く、急性大動脈解離などの疾患よりも時間的余裕がありません。破裂した場合は約半数しか病院に搬送できず緊急手術に持ち込めても死亡率は30~90%にも上るという報告もあります。待機的に手術を施行した場合の当院の死亡率が0.3%程度であることを考えると大きな差異です。破裂する前にピックアップされた患者さんはある意味、ラッキーと考えられます。破裂前に手術を施行すれば、成績も非常に安定しております。ほとんどの症例で外科的な人工血管置換術が可能です。腹部大動脈瘤はその足側で左右に分岐してからの動脈(腸骨動脈と呼びます)にも瘤化や狭窄(内腔が細くなっていること)が認められることが多く、可能な限り臓器への血管の再建を心がけています。そのため開腹手術のリスクに問題が無ければ外科的手術を原則としています。

    • 上行弓部大動脈瘤
      腹部大動脈瘤
    • 上行弓部人工血管置換
      腹部大動脈瘤切迫破裂
    • 下行大動脈瘤
      腹部大動脈瘤手術
    • 下行大動脈人工血管置換
      4分枝人工血管による置換術
    • 上行弓部大動脈瘤
      4分枝人工血管による置換術

    また外科的な人工血管置換術に対して、当院では平成24年よりステントグラフトによる治療を実施しています。ステントグラフトは瘤の形態で適応が制限されること、分枝血流が犠牲になること、エンドリークの懸念などで術後に造影CTによる定期的なフォローアップが必須であることなど問題点もありますが、手術侵襲は小さく術後一週間ほどで退院することが可能です。中期遠隔成績では良好な結果が報告されております。従来の開胸、開腹を伴う外科的治療と比較して低侵襲で高齢者や合併症を有する患者さんにも施行できる可能性があります。現在のところ、75歳以上で手術を行なうに際して何らかの問題がある患者さんでは、動脈瘤の形態やアプローチ血管などを評価して適応があれば積極的に治療を薦めています。

    • 上行弓部人工血管置換
      腹部大動脈瘤ステントグラフト治療

    • 腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術
    • 上行弓部人工血管置換
      腹部大動脈瘤ステントグラフト

    胸部大動脈瘤のステントグラフト治療については現在、実施施設の認定を申請中で、令和3年5月現在当院では実施できておりません。適応患者さんを選択して名古屋大学などの実施可能施設に紹介しております。

    大動脈解離

    大動脈解離症は高血圧などが原因で大動脈の内膜に亀裂が生じ動脈壁が裂けてしまう病気です。突然、胸部や背部の激しく引き裂かれるような痛みで発症します。この疾患は近年、増加の傾向にあり生命を脅かす大病で緊急性を要します。高血圧があり突然発症した胸痛や背部痛はこの疾患を疑います。すぐに救急車を要請して来院して下さい。

    • 上行弓部人工血管置換
      解離のメカニズム
    • 上行弓部人工血管置換
      Stanford分類
    • 上行弓部人工血管置換
      解離の合併症
    • 上行弓部人工血管置換
      解離の手術
    <大動脈解離を発症された患者さま、そのご家族さまへ>

    突然発症され生命が危険にさらされる非常に重篤な疾患であり、特にA型という緊急手術を必要とするタイプでは時間的な猶予の無いことが多く、状態によっては手術室へ直行する必要があります。術前に十分な説明ができないことが多く、大変不安に思われることでしょう。本疾患は大動脈壁が裂けてしまう急性疾患であるため、体内への大出血や脳脊髄、心臓、腹部臓器、下肢などの重要臓器への血流障害が生じると救命困難です。緊急手術となる疾患の中では非常に厳しい領域に属しますが、当科ではチーム一丸となって全力で治療にあたっております。

    • 急性大動脈解離
      急性大動脈解離
    • 上行弓部大動脈人工血管置換術
      上行弓部大動脈人工血管置換術

    現実的には患者さんの状態が刻一刻と悪化していくため、以下にお示しする説明書をご家族にお渡しするのが精一杯で、手術室に直行するケースも稀ではありません。参考にしてください。

    ご家族さま、関係者さまへ

    急性大動脈解離は高血圧などが原因で突然、大動脈の血管壁が裂けてしまう疾患です。今まで経験したことの無いような激しい胸痛や背部痛で発症して、短時間で重篤な状態に陥ってしまう恐ろしい大病です。特にA型の急性大動脈解離は心臓や脳などの重要臓器に障害が及ぶため、数日以内に9割以上の方がお亡くなりになります。救命のためには一か八かでも緊急手術が必要です。
    大動脈は全身の臓器に血液を送っていますが、この血管壁が全長にわたって裂けてしまうため、大量出血やあらゆる臓器の血流障害が生じる可能性があります。主な死因は心臓周囲へ出血することによる血圧低下(「心タンポナーデ」といいます)、冠動脈が閉塞することによる心筋梗塞、頸動脈が閉塞しておこる脳梗塞、腸管や下肢の血流不全です。
    緊急手術はすべての大動脈を修復することは不可能ですので、心臓に近い大動脈の「幹」に相当する主要な部分(上行大動脈あるいは弓部大動脈)を人工血管で置換します。人工心肺装置を使ってからだを20℃台の低体温にします。心臓や脳、脊髄をはじめ全身臓器の血液供給を一定時間、完全に停止させて手術を行ないます。術中、術後の出血量は多く、大量の輸血が必要になります。したがって若年者や合併症の無いような方でも、侵襲の大きな大手術になります。あくまでも救命目的の手術になりますので、救命できたケースでも術後は心肺機能や脳神経障害を合併したために日常生活が著しく損なわれたり、寝たきり状態になることもあります。
    時間的に余裕が無いため、術前に十分な説明ができないまま手術を実施することになります。突然発症され生命が危険にさらされている重篤な状態であるため、どなたさまも頭の中が混乱されているものとお察しいたします。チーム一丸となって全力で治療にあたります。

    閉塞性動脈硬化症(ASO)

    動脈硬化が進行して下肢に十分な血液が供給できなくなる病気で、「足の狭心症」とも言われています。下肢に限った症状として見られがちな間歇性破行(ある一定の距離を歩行すると下肢に痺れや痛みが生じてくること)は生命予後が不良で全身の血管病を知らせるシグナルです。ASOの半数以上に冠動脈疾患や脳血管障害の合併が認められます。

    • 下肢血管造影
      下肢血管造影

    日常生活に支障を来す明らかな下肢の症状が認められる場合は血行再建の適応があると考えます。下記の臨床症状分類(Fontaine分類)が病気の進行度をみる指標になります。2度以上の症状があると治療が必要で間歇性破行が中等度以上の方は血行再建療法(血管内治療、手術)が必要になります。
    1度:無症状(冷感、しびれ)
    2度:間歇性破行(ある一定の距離を歩行すると下肢に痺れや痛みが生じる)
    3度:安静時疼痛(重症虚血肢)
    4度:壊疽、下肢の潰瘍形成(重症虚血肢)
    治療としては循環器内科と連携して血管内治療(percutaneous transluminal angioplasty 略してPTA)あるいは外科的バイパス手術を施行します。血管内治療(PTA)とはバルーンやステントによる血管形成術のことで、バルーンを装着したカテーテルを用いて狭窄または閉塞してしまった血管を拡張させることにより血流の改善を図る治療方法です。バルーンカテーテルに加えてステントという金属製の網目状の筒を留置して血管内腔の拡大と維持を行なうことも頻回に実施しています。

    • 上行弓部人工血管置換
      血管内治療 (PTA)

    下肢虚血の程度、血管の硬化度と形態などの評価が必要ですので、まず循環器内科の受診が必要です。外科的手術は人工血管や自分の静脈を用いたバイパス術または外科的な血管形成術(内膜摘除、パッチ形成)を実施しています。

    • 上行弓部人工血管置換
      外科的バイパス手術
    • Y型人工血管によるバイパス
      Y型人工血管によるバイパス
    • 後腹膜経路によるバイパス
      後腹膜経路によるバイパス

    また四肢の急性動脈閉塞症は、四肢の動脈が突然血栓などで閉塞を起こすことで血液が供給されなくなってしまう疾患です。心房細動などの不整脈が原因となって発症する患者さんも多く来院されます。脳梗塞、心筋梗塞と同様で発症後迅速な処置が必要となります。救急対応が必要ですので急いで受診して下さい。 

    動脈管開存症(PDA)

    新生児期の心臓疾患です。胎児期に機能していた動脈管という組織が出生後に閉鎖しないため心臓や肺に負担をかけます。多くの症例が内科的治療に反応しますが、まれに外科的治療が必要となります。当科ではNICU管理のもと手術要請があれば積極的に治療にあたっています。お困りの際は緊急的な対応も可能ですので、小児科医師か当科の方にご相談ください。

    • 新生児に対する動脈管結紮術
      新生児に対する動脈管結紮術
    • 動脈管結紮術
      動脈管結紮術
    入院の目安
    区分 入院期間
    冠動脈バイパス手術 約2~3週間
    弁膜症手術 約2~3週間
    胸部大動脈瘤手術 約3週間
    腹部大動脈瘤手術 約2週間
    腹部大動脈瘤手術(ステントグラフト) 約5~8日間
    下肢血行再建術 約10日間

    診療実績

    心臓血管外科 平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度
    単独冠動脈バイパス手術 36 45 43 38 41
      CABG+弁膜症手術 9 17 17 12 13
      CABG+大血管手術 0 1 0 0 2
    単独弁膜症手術 22 25 19 24 12
    弁膜症+大血管手術 3 0 2 4 2
    胸部大動脈瘤 19 30 24 20 23
    腹部大動脈瘤 22 29 27 32 29
    末梢血管再建術 8 4 3 6 14

    スタッフ紹介

    山﨑 武則

    やまざき たけのり

    心臓血管外科代表部長

    1. 心臓血管外科
    1. 日本心臓血管外科学会 専門医
      日本胸部外科学会 指導医
      日本外科学会 専門医・指導医
      日本心臓血管外科学会国際会員
      麻酔科標榜医
      臨床研修指導医

    西 俊彦

    にし としひこ

    心臓血管外科医長

    1. 心臓血管外科
    1. 日本外科学会 専門医
      日本心臓血管外科学会 専門医
      胸部ステントグラフト実施医
      腹部ステントグラフト実施医
      浅大腿動脈ステントグラフト実施医
      TAVR実施医

    当院へのご質問・ご意見など、お気軽にお問い合わせください。

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